仕事のストレスによる労災請求(自殺以外)、「医療、福祉」の件数が業種別で最多 — 令和8年版 過労死等防止対策白書を読む

メディレクト編集部の週次ノート|対象週 2026年10月5日〜11日|公開 2026-10-13
編集部ノート働き方医療介護

今週の動き

2026年10月9日(金)、政府は「令和8年版 過労死等防止対策白書」を閣議決定し、厚生労働省が公表しました。過労死等防止対策推進法にもとづいて毎年国会に報告する年次報告書で、今回が11回目です。白書がいう「過労死等」には、働きすぎによる脳・心臓の病気のほか、仕事の強いストレスによる精神障害も含まれます。

医療・介護で働く人にとって目を引くのは、精神障害の労災請求の数字です。労災請求とは、仕事が原因で病気になったとして労災保険の給付を求めた件数です。仕事が原因だと認められた件数(支給決定)とは別の数です。

白書によると、令和7年度の精神障害の労災請求は全業種で4,958件(うち自殺以外は4,743件)で、前年度より1,178件増えました。自殺以外の事案を業種別に見ると、「医療、福祉」が1,254件で最も多く、雇用されている人(役員を除く)100万人あたりでも140.3件で最多でした。件数の比較では、白書にならい、他に分類されないサービス業などをまとめた「その他の事業」を除いています。自殺以外の支給決定も、「医療、福祉」が290件(100万人あたり32.4件)で最多です。

「医療、福祉」は、医療業と、社会保険・社会福祉・介護事業などをまとめた区分です。介護だけを取り出した数字ではありません。中の区分の請求件数(自殺以外)は次のとおりで、白書はどちらも増加傾向としています(第1-3-4-12図・第1-3-4-13図。職種別の内訳が載る平成28年度と比べています)。

区分平成28年度令和6年度令和7年度
医療業123件381件564件
社会保険・社会福祉・介護事業162件583件686件

令和7年度の医療業564件を職種で分けると、保健師・助産師・看護師が293件、一般事務の人が72件、医療技術者が66件、医師・歯科医師・獣医師・薬剤師が30件、その他が103件でした。社会保険・社会福祉・介護事業の686件では、介護サービスの職業の人が270件、社会福祉の専門職が218件です。

白書は、調査研究の重点対象の一つとして「医療」(医師と、「医療、福祉」で働く看護師)を挙げ、支給決定された事案も分析しています。精神障害の事案は、1年度あたりの平均(3年度分の平均)が、平成24〜26年度の16.3件から、令和3〜5年度は59.3件と約3倍になりました。この「医療」は医師と看護師に限った数字で、先ほどの「医療、福祉」の290件(令和7年度)とは範囲も年度も違います。

この数字から読み取れること

白書は報告書なので、これで新しいルールができるわけではありません。ただ、医療・介護の職場で何が起きているかを、国の数字で確かめられるようになりました。

一つは、職場の人間関係です。白書は、労災の決定件数(支給と不支給を合わせた件数)を出来事の種類で分けると、「医療、福祉」では「対人関係」が最も多いとしています。白書が紹介している就業者調査(労働安全衛生総合研究所の調査研究。調査会社に登録した全国の就業者21,123人に、おおむね令和7年11月の状況を尋ねたもの)では、パワーハラスメントを受けた経験がある人は全体で19.3%、「医療、福祉」で25.6%でした。カスタマーハラスメント(客や利用者からの嫌がらせ)は全体で5.7%、「医療、福祉」で8.5%です。経験の期間は白書の本文には書かれておらず、登録者への調査なので、働く人全体を代表するとは限りません。

もう一つは、請求が増えた理由がまだ分かっていないことです。白書は全業種の請求の増加について、上司とのトラブルなどで悩む人が多数いることは「明らかと考えられる」としつつ、それが請求の増えた原因かどうかは「なお分析の余地がある」と書いています。数字が増えたことだけを見て、職場が急に悪くなったと決めつけないほうがよさそうです。

なお、白書の対策の章は、2024年4月から医師などにも適用された時間外労働の上限規制について、労働基準監督署が遵守の徹底を図るとしています。

広告

ホットヨガ カルドの体験

ホットヨガスタジオ カルドの体験。

体験を見る →

編集部の見解

編集部がこの白書でいちばん伝えたいのは、医療・介護の働きやすさは給与や勤務時間だけでは測れない、ということです。「医療、福祉」の労災の決定件数で最も多かったのは「対人関係」に関わる出来事で、これは募集要項の数字には表れません。

そこで、転職先を探している方には、見学や面接で次のことを聞いてみることを提案します。

  1. 困ったときの相談先: 「入職後に困ったとき、最初に相談する相手は決まっていますか」
  2. トラブルへの対応: 「患者さんや利用者さん、ご家族とのトラブルには、どのように対応していますか」
  3. 夜勤・当直: 「夜勤(当直)は月に何回くらいで、明けの日はどう扱われますか」

どれも働く側が確かめてよいことで、このように仕組みを尋ねる形にすれば、失礼にはならないと考えます。医療業で一般事務の仕事をする人の請求が72件あったように、事務の仕事も無関係ではありません。職種に関係なく、確かめておく価値があると考えます。

一方で、白書の数字は「請求」が中心で、どの職場で起きたかは分かりません。この数字から特定の職種や職場を避けるべきだと考える必要はない、というのが編集部の考えです。求人を比べるときは、公式ページで勤務体制や休日の書き方を確かめ、分からないことは応募の前に聞く。その積み重ねが、自分に合う職場を選ぶ近道になると考えています。

メディレクトについて

メディレクトは、病院・薬局・歯科医院・介護事業所の公式サイトに載っている募集だけを集めた検索サイトです。紹介や仲介はしておらず、登録も不要です。どの募集からも公式ページへ移れるので、勤務体制や休日の条件はそこで確かめられます。

出典

掲載内容は各病院の公式サイトの記載を、当サイトが機械的に読み取って整理したものです。応募・条件の確認は必ず病院の公式ページで行ってください。
コラム|編集部ノート|このサイトについて|掲載ポリシー|プライバシーポリシー|このサイトは求職者の個人情報を収集しません。
© 2026 メディレクト