医師が多い地域・少ない地域と、これからの開業・転職に効く「医師偏在対策」

メディレクト のコラム|2026-09-26
医師開業制度

2026年9月25日、在宅医療のクリニック経営者を名乗るXのアカウントが、福岡市も医師が多すぎる地域になり来年度以降の市内の開業はかなり厳しくなる、という趣旨を投稿しました。この記事では、その内容を厚生労働省などの一次資料で確かめ、決まっていることとまだ決まっていないことを分けて整理します(資料は2026年9月26日に確認)。

先に結論:投稿の主張と一次資料

投稿の主張一次資料で確かめた結果
医師過剰地域は東京・大阪・京都・兵庫・福岡国が示した「外来医師過多区域」の候補9医療圏の所在地と一致する
二次医療圏より細かい区域を設定できるその通り。市区町村・地区単位の指定も考えられる、とガイドラインにある
「3年で保健医療機関取消」(投稿の表記のまま。正しくは「保険医療機関」)「取消」ではない。要請に応じないと、通常6年の指定に3年以内の期限が付くことがある
福岡市は来年度以降の開業が厳しくなる福岡・糸島(福岡市・糸島市)は候補区域。福岡県が指定したかどうかは確認できていない
診療科の標榜で開業を弾かれる確認した条文は届出・要請・勧告・公表の仕組みで、開設を認めない規定は無い
調整会議は申請が多すぎて全部扱えない一次資料では確認できなかった。2024年度の集計(後述)では会議への出席を求められた開業者は0件で、この数字からは「多すぎて扱えない」かどうかは判断できない
5〜10年で病院がたくさん潰れる投稿者の見通し。今回調べた一次資料に、これに当たる推計は無かった

「医師が多い」には2つの物差しがある

① 医師偏在指標(都道府県・二次医療圏)。二次医療圏とは、入院医療をひとまとまりで考える単位として都道府県が区切った区域(全国に約330。複数の市区町村をまとめたものが多い)です。人口あたりの医師数を年齢構成などで補正した指標です。2026年4月公表版は全国266.8で、上位3分の1(276.9以上)の16都府県が「医師多数都道府県」です。上から東京358.6・京都326.6・福岡320.4・岡山302.7・沖縄300.3で、大阪294.7・兵庫281.1も入ります。下位は青森194.4・茨城197.5など。厚労省は、相対的な偏りを示すもので、医師が足りているかを示すものではないと注記しています。

② 外来医師過多区域の候補区域(二次医療圏)。診療所の医師の多さを表す「外来医師偏在指標」が全国平均+標準偏差の1.5倍以上で、かつ可住地面積あたりの診療所数が上位10%の医療圏です。厚労省が2026年3月27日に公表した9か所は次のとおりです。

都府県二次医療圏(該当する市区町村)
東京都区中央部(千代田・中央・港・文京・台東)、区西部(新宿・中野・杉並)、区西南部(目黒・世田谷・渋谷)、区南部(品川・大田)、区西北部(豊島・北・板橋・練馬)
京都府京都・乙訓(京都市・向日市・長岡京市・大山崎町)
大阪府大阪市
福岡県福岡・糸島(福岡市・糸島市)
兵庫県神戸(神戸市)

投稿の5都府県は②と一致します。①は岡山や沖縄なども含み、2つは別の物差しです。

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2026年4月から始まった仕組み(決まっていること)

2025年12月に成立した改正医療法・健康保険法(令和7年12月12日公布・法律第87号)のうち、外来医師過多区域の規定は2026年4月1日に施行されました。流れは次のとおりです。

  1. 都道府県が候補の中から区域を指定し、公示する
  2. その区域で入院ベッドの無い診療所を開く人は、開設の6か月前までに、診療科目や「地域で特に必要な外来医療」を担う意向などを届け出る(親の急逝による承継などは例外)
  3. 担わない場合、都道府県は協議の場での説明を求め、理由がやむを得ないと認められなければ、期限を定めて提供を要請する
  4. 開業後も提供していなければ、医療審議会での説明、勧告、公表と進む
  5. 要請に応じない・勧告を受けた場合、厚生労働大臣は保険医療機関の指定(健康保険で診療するために必要な指定。これが無いと保険診療ができない)に3年以内の期限を付けることができる(健康保険法第68条の2。通常の指定期間は6年)。その後、求められた医療を提供していると確認できれば、次の指定期間は6年に戻る(ガイドライン)

「地域で特に必要な外来医療」の例は、夜間・休日の初期救急、在宅医療、学校医・予防接種、医師が足りない地域での診療(土日の代わりの勤務など)です。厚労省の検討会資料は、要請内容を特定の診療科1つだけにすることは想定していない、としています。

指定の時期は都道府県ごとです。東京都のページ(2026年4月24日更新)は、指定・公表から6か月後に開設する診療所が届出の対象になると説明し、「10月1日に指定すれば翌年4月1日以降の開設が対象」という例を挙げています。各都道府県の指定状況は、この記事では確認できていません。

また改正法は、施行後3年を目途に、区域内で新規開設が廃止を上回っていれば新たな開設の在り方を検討する、としています。3年後の追加の措置は、今は決まっていません。

地域医療構想調整会議と開業

新規開業者と話し合う「外来医療の協議の場」は、地域医療構想調整会議(二次医療圏ごとに、病院・診療所・医師会・行政などが集まって地域の医療のあり方を話し合う会議)を使ってもよいとされています。厚労省の集計では、2024年度に外来医師多数区域(これまでの仕組みの区域)で開業した3,578件のうち、地域で足りない医療を担うよう要請したのは2,631件、合意できたのは661件でした。協議の場への出席要請は0件でした。つまり2024年度の時点では、会議に呼ばれた開業者はおらず、「申請が多すぎて扱えない」という投稿の話は、この集計からは裏づけられません(否定もできません)。新しい仕組みについてガイドラインは、協議の場を少なくとも3か月に1回開く必要があると見込んでいます。

医師不足の地域への支援

医師が足りない地域は「重点医師偏在対策支援区域」とし、そこで承継・開業する診療所の施設・設備・定着への支援が先に始まっています(国が示した候補は109区域)。この区域の医師の手当を、保険者からの拠出で支給する事業も法律に入りました。医学部定員は、2026年7月の検討会資料で2028年度の臨時定員を全国で減らす方向(案)が示されていますが、まだ検討中です。

数字で見る医師と病院

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開業・転職を考える医師が確かめること

当サイト「メディレクト」は、病院の公式サイトに載っている募集だけを集めた検索サイトです(登録不要・無料)。地域を決めたら、医師の募集でその都道府県の募集を見てみてください。

この記事の制度と数字は、記事末尾の出典(厚生労働省・東京都の公表資料)に基づいています。制度は運用の細部が今後も変わるので、最新の情報は出典のページで確認してください。

出典

この記事について

この記事は メディレクト が公開情報をもとにまとめた読み物です。制度や数字は変わることがあるので、出典のページで最新の内容を確認してください。メディレクト は病院・薬局・歯科医院・介護事業所の公式サイトに載っている募集だけを集めた検索サイトで、紹介や仲介はしていません。
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